SSブログ

白紙七枚目 [白紙]

そこにあったのは、何の変哲もない或るブログの、白紙のページ。
そこにあったのは、何の変哲もない或るブログの、白紙のページ。
7枚目は、どうやら最後のページ。
貴方がその白紙に指を走らせると、意図して隠されたと思しき文字が浮かび上がって来ました。

きっと誰も得しないけれど、始めたならば終わりまで。
誰の目にも触れなければ良いと、その著者から願われた白紙でも、
誰かに見てもらえたなら、誰かにとって価値あるものになれたのかもしれません。
ここまで見てきて下さったことに心から感謝を。

気を付けてほしいことには二つ、
実際にはMFLでは決して再現できない立ち回りに満ちております。
魔砲少女まじかる☆りぷるん第六話や暴走少女スィンパの五話までの話がこれでもかとばかりに関連しております、そちらを先にお読みください。

当作品は、MFLの世界を舞台にした、偉大なる先駆者やみなべの著作『魔砲少女まじかる☆りぷるん』の二次創作であり、
MFL、魔砲少女まじかる☆りぷるん、両作品の世界観や雰囲気といったものをぶち壊す可能性に満ちております。
特に、ニェポやデーボやシェマなど、NPCとのやりとりが多く、貴方の愛するキャラクターたちのイメージを台無しにすることが予想されます。
この作品を読み進めるにあたり、細かいことは気になさいませんよう心よりお願い申し上げます。




--- キ リ ト リ ---




『暴走少女スィンパ』



いつからか、その背中を追いかけてばかりいた。
シディララマに降りかかる災いを退けること幾たび、皆に望まれて長老に就任し、誰もがその実力を認める偉大なブリーダー。
御伽噺の英雄のように非の打ち所のないその人を、シェマもまた非の打ち所のない人物として見た。
その背中はシディララマの全てを背負っても決して曲がらず、強く、大きく、
なぜか、寂しげだったのを覚えている。



オープニングテーマ 『光の弾丸は撃ちぬけない』
作詞作曲:暴走少女スィンパ制作委員会
歌:スターダストガールズ(ヒューリ・エルナ・ミリーア)




第六話(結)紳士的にわらえれば





船は進む。
船を操る少年も、同乗する娘も、船を牽くモンスターすらもまだ若く、傍から見てどこか心もとない航海だが、彼らの表情に不安はない。
「いや、良いんだけどさ」
オープニングの流れを、納得いかない様子でスィンパが遮った。
「よくもまぁ都合よく船があって、いつぞやのグジラも来てくれたもんだね?」
「と、思うでしょ。船は多分父ちゃんの予備かな、それにしては一回り小さいけど新品のまま倉庫に保管されてたのをそのまま出してきたんだよ。グジラは前から回復薬を撒いて少しずつユタトラに誘導してて、・・・それでもユタトラに来るにはまだまだ時間がかかるはずだったんだけどね」
「それがまた、なんで来ちゃったわけ?」
「考えざるもの、その答えを知るべからず」
ニェポはふふんと嬉しげに笑って返す。要するに自分で考えろということだ。
回復薬を撒いてユタトラ方面に誘導していたグジラが、呼びもしないのに急に船着場にやってきた理由。
その直前に船着場で何があったかといえば、居合わせたブリーダー総出でシエルレを撃退したくらいで・・・
スィンパは顔を上げた。
「回復薬の原材料は、森水?」
「大正解!でっかいシエルレが大量に森水をばら撒いていったからね」
そりゃ来ちゃうよね、と、ニェポは船を牽くグジラに目をやった。
その進む先に、イダルの集う島が見える。
そこで何が待っているか・・・
とりあえず『誰が』待っているかに限っては、大体の想像はついていた。

荒れる海を裂くように進み、左右から押し寄せる波を砕いて、
うっすらと紫の霧が立ち込める中、船はようやくその島の海岸にたどり着く。
当然というか、魔砲少女の乗ってきた船にはデーボがおり、ニェポを見つけるや否やこちらの船に乗り込んできて連れて行ってしまった。
いつもなら哀れっぽく悲鳴でも上げるニェポだが、今日は正面から向かっていった辺り、何かケリをつける気でいるのかもしれない。
ニェポにはニェポの戦いがあるように、スィンパにもスィンパの戦いがある。
眼前には、荒れた岩のような地面がどこまでも続く、酷く殺風景な島。
その地にスィンパが足を踏み入れると、待っていたかのように霧の中から見覚えのあるクエスターハットが現れた。

シェマ・・・否、蝶の仮面で顔を覆った彼は、今はシュマと呼ぶべきか。
珍しくディナシーのアトロポスを伴っているが、彼がシュマであるうちはアトロ『ボ』スと呼ぶべきなのか、考えどころだった。
「ついにここまできてしまったか、デーボにはニェポ君の船出について注意し、リトバ君にもスィンパの遠征について気をつけるよう言った。この展開を避けるために散々手を回したつもりだったのだが」
「どうしてそこまでして私を止めたいのかね・・・さぁ、ここを通してもらうとするよ」
「そう慌てるな、君に何を言っても無駄だろうが、まずは話し合おうじゃないか」
若木の木剣を突きつけて宣戦布告をするスィンパを、シュマは余裕の表情でいなす。
その手に抱えていた黄色い布の塊をスィンパに放ってよこした。
「今更話し合いなんて調子狂うじゃな、た、はっ」
スィンパはそれを、取りこぼしそうになりながらどうにか捉える。
広げてみようとした布の隅に『ヌtソバ』と見覚えのあるヘタクソな刺繍が入っているのを見て、手が止まった。
「・・・これは」
「デーボが海で拾ったそうだ。後戻りしない覚悟を固めるために捨てたのだろう?君が魔砲少女の件に首を突っ込む時は、いつもこの服を脱ぎ去っていたからな」
それは間違いではないけれど、自分にとって意味のあることを冷静に推理されるのは無性に腹が立つものだ。
スィンパが険しい表情をすると、シュマはやれやれと肩をすくめた。
「そう睨まないでくれ、私が言いたいのは一つだけなんだ。その服を着て、元の生活に戻って欲しい。ここで君に出来ることは何も無い」
「出来ることが無いなんて言われてもね。馬鹿はやってみなきゃ分からないの、知らなかった?」
手にした夏衣を手早くたたんでポーチに突っ込み、指示具を構える。
橙は身を屈めてじりっと、前に出た。
「怪我で済まない覚悟が出来ているのだろうな、仮にも私は長老代理だぞ」
その地位に就くのに必要なのは人望だけではない。
状況を読む洞察力、ブレの無い判断力、流れを掴む采配の心得、
長老代理に必要とされる能力はすなわち、ブリーダーがモンスターを伴って戦うために必要な能力だ。
言外に力の差を強調されながらも、スィンパは指示具を持ち直す動作で答える。
そこに開戦の合図は無いが、それでも『始まった』のだと両者には分かった。

束の間の静かな時間が流れる。
ガッツ回復の間でも、距離の取り合いでもない、互いに隙を探り合うばかりの時間。
自らの守りを念頭に置きつつ、相手の構えに綻びを待つ。
両者ともに睨み合いが続き、動かない。
張り詰めた空気に猜疑が混じる。
アトロボスが挑発的にこちらを見ている、カウンターを狙っているのか?
シュマが身動きした、既に何か仕掛けられているのだろうか?
私は既に仕掛けるタイミングを逃しているんじゃあないか?
「ムーンサンダー!」
静けさを破る一声を発したのはスィンパ。
場の緊張に耐えかねて搾り出されたその指示は、余りに荒い動作だった。
予備動作からそれを予期したシュマは、どこで指示を出したのだろう。声に出すこともなくアトロボスにセルフシールドを展開させる。
橙の放った一筋の雷が瞬間遅れて、シールドに阻まれた。
「ファイアボール」
落ち着き払ったシュマの指示に燃え立つ火球が現れ、放たれないままアトロボスの周囲に留まる。
既に火球の形を取ったそれが一瞬の準備時間もなしに撃てる可能性を考えて、スィンパは攻めずに遠距離まで引き下がった。
視線の先で一つまた一つと火球は数を増やす、その数は、5。
中距離範囲の技であるファイアボールの指示に対して遠距離ならば安全だろうと、スィンパはかすかに警戒を緩める。
それに気付いて、シュマは微笑んだ。
「皮むき勝負のお返しをしよう、これが私の常識の破り方だ」
そのまま彼が円盤石に似た形の指示具を振り下ろすと、その動きに従って5つの火球が橙に向けて放たれる。
本来は中距離範囲の技であるため、遠距離に位置取る橙の元に迫るその軌道は一見無茶苦茶だが、しかし5つという数が、巧妙に抜け道を埋め合っていた。
遠距離にいるという余裕が一瞬にして吹き飛ぶ。
「んな無茶な!」
「ッ!」
慌てふためく主人の指示を待たず、橙は息を詰めて火球の包囲網の中に踊りこんだ。
あるかなしかの火球同士の隙間に身体を滑り込ませ、ヒゲの先に至るまで神経を研ぎ澄ませてかいくぐる。
その僅かの間にスィンパは気を取り直し、眼前に展開される攻撃の中に潜むものを見出した。
動きの遅れた尾の毛が焦げる臭い。しかし、橙は冷静さを欠くことなく最後の火球を
「下がって!」
伏せてやり過ごそうとするのを止めて、飛び退いた。
勢いをなくした火球がぼうっと橙の背をかすめ、一瞬前まで居た場所を風の刃が襲う。
「右へッ!」
続けざまの追撃を目で捉えるよりも早く、橙はただ声に導かれて横とびに跳んだ。
岩のような地面を砕かんばかりに叩きつける、爆風の音。
他に仕掛けられた攻撃が無いのを確認すると、スィンパは肩で息をする橙に声をかける。
「やるじゃん、橙」
当然だ、と言いたげに毛先の焦げた尾が揺れた。
橙は冷静にファイアボールに対処した、そのために声も無く指示されたウィンディバレットには気付けなかった。
スィンパは一度 気が反れていたから、全体を把握し直すことが出来ただけ。
未熟さに助けられる自分とは違い、なんと相手の手強いことか。
口にせずとも指示が伝わるモンスターとの繋がりの強さ、その技の威力、そしてタイミングから、伊達に長老代理をしているわけではないのだとスィンパは思い知った。
ファイアボールが5つに、ウィンディバレットが2つ。
その手数の多さに驚き、そして一つの道を見出す。
シュマが口を開いた。
「ファイアボールに混ぜるとなかなか、ウィンディバレットは目に付かないだろう?個人大会でも使わない奥の手だったんだが」
「スターサンダーッ!」
グレードA個人戦に胡散臭い名前の参加者が居るって噂があると思ったらやっぱり、なんて今更な突っ込みはしない、決してしない。
その発言の狙いは、ガッツ回復だ。
だから相槌を打つ代わりに一歩踏み込んで速攻の一撃を見舞う。
その一撃で狙うのは、アトロボスではなくシュマ。
セルフシールドに加えて、多くの攻撃を繰り出したシュマにガッツが残っているはずはなく、そのスターサンダーは確実に彼の最後のガッツを刈り取る

はず、だった。

雷撃によろりと姿勢を崩したシュマは、しかし地に膝を付くことはなく、ほんの一歩で体制を立て直す。
円盤石のような指示具で真っ直ぐこちらを指して、宣言した。
「ウィンディバレット」
その身に攻撃を受けても動じていない。
冷たく見据えるその目は誇らず驕らず、けれど自分が負けるとは露ほどにも思っていない様子だった。
スィンパはようやく、自分が遠距離範囲から抜け出すにはあまりに深く立ち入りすぎている事に気付く。
離れるのも、近づくのも、間に合わない。

何故シュマがガッツブレイクを起こさないのか理解するより早く、撃ち出された風弾が牙を剥く。
スィンパは回避手段を一つだけ思いついて、橙の前に出ようと飛び出した。
それを知っていたかのように、橙は更に前に出る。
橙は馬鹿だ、シュマさんに攻撃するのを躊躇わなかったくせに。
ブリーダーだって攻撃が当たれば痛いけど、それでも勝負は負けじゃない。
強い相手に負けるのは、仕方ない。
自分が怪我で済まないとしても構わない。
けれど、『橙が』怪我で済まない覚悟までは出来ていなかったと、今ようやく気付いた。
「ちぇぇぇぇぇぇぇぇえん!!!」

そこに4つの意思があった。
傷付けたくはないのだと、歯を食いしばる意思
その意思を理解し、応えようと努める意思
ただ無事を願って、くず折れる意思
決して負けられないと、全霊を込めて吼える意思
少しずつちぐはぐでありながら、たまたま一つの結果を望むそれぞれの意思。
(どうか、無事でありますように)
銀の石が、それらの意思に力を貸す。

一瞬、霧が濃くなったように見えたが、その紫の霧の色をも纏った一撃が正面から橙を捉える。
橙の身体が二度三度、ボールのように跳ねた。
追撃があろうとも関係ない。
スィンパは橙に駆け寄り、その傍に膝をつく。
そして何かに気付き驚いたように目を見開くと、一言二言声をかけ、橙の小さな鳴き声がそれに答えた。
「酷な戦いを強いたのは、君だからな・・・」
スィンパの顔が泣きそうになるのを見て、シュマは辛そうに目を反らす。
だから気付けなかった。
その目から零れたものが安堵の涙であることも、橙がまだ負けを認めていないことも。
橙の強い意思がスィンパの心を奮い立たせたことも。
シュマは沈黙を避けるように口を開く。
「ガッツブレイクを狙っていたな。ろくに大会にも出ない君は知るまいが、この指示具・・・ヴァシアタディスクは、指示できる技が限られる代わりにガッツの上限を大きく上乗せする。・・・知識量もまた勝負の命運を分けるということだ」
スィンパはその言葉を胸に刻んだ。
橙の元で膝をつき、まだ何か声をかけているスィンパを見下ろしてシュマは続ける。
「これが君と私の力の差だ。私より弱い君が、特別な力を持つリプル君に、何を出来るつもりでいるんだ」
「どうして・・・」
うつむいていた顔をようやく上げて、スィンパはシュマを見上げる。
「どうしてそこまで止めようとするの?私が結局何も出来ないで終わったって、シュマさんには関係ないじゃない」
「関係ない、か。・・・確かに、もし君だったら違う結末を迎えたのかもしれないな」
シュマの目が厳しく、しかしどこか懐かしそうに、スィンパを眺める。
その目が自分を、自分と違う誰かに重ね合わせて見ていることに気付いて、スィンパは訊いた。
「教えてよ、シュマさんの知ってる『誰か』の結末を」
促す声に押されて、シュマは口を開き、何事か言おうとして閉じる。
ゆっくり時間をかけて迷うように、シュマは語り始めた。
「ある若者が居た。彼には尊敬する人があった。その人の背を追いかけながら、いつか必ず追いつこうと努力したが・・・どうしても届かなくてな。努力が足りなかったのか、生まれ持つ才能が足りなかったのか。とうとう彼の尊敬する人は彼を置いて、一人で苦難の遠征に出かけてしまったんだ」
「その若者って・・・・・・」
「それは、足手まといだと言われることと同じ。力の差は埋められないものだと、彼は学んだ」
言葉は答えなかったが、シュマの固く握り締められた拳が、中途半端に消えた問いに答えていた。
「それは、怒っているの?・・・後悔しているの?」
「・・・・・・」
きつく握られた拳を示して問えば、シュマは初めてそれに気付いたように見つめて、拳を緩める。
「少しは成長した、今なら何か出来るかもしれない。・・・・・・」
断言は出来ないで、拳を解いた手を見つめた。
「・・・それを試すのが怖いんだ」
ポツリと漏らしておいてから、ふ、と笑いを漏らす。
「力のある人の傍に立って、強さの壁に全力でぶつかって、それでも力の無い我々には歯も立たないことばかりだ。若者の話は終わった。さぁ、ユタトラに帰り・・・」
「駄目だよ、オチまで言ってくれなきゃ」
「おしまいまで話しただろう、この話に続きは無いんだ」
「今、続いてる」
その言葉に。ピタリとシュマが動きを止める。
ようやくスィンパが負けを認めていないことに気付いたのだ。
一度は打ち負かしたはずのスィンパが、今、その目に意思を宿してシュマを見上げている。
スィンパは立ち上がって、正面からシュマを見た。
そして問う、確かめなければならないことを一つずつ確認するように。
「力の差は埋められない。それを理解してまだ、その若者は魔砲少女の傍に立つ。何故?」
「その答えに納得できなければまた戦おうというわけか」
「やり直すチャンスが欲しかった?けれどその為にリプル氏を巻き込むほどシュマさんは我侭じゃないね」
「残念だが、君のパートナーはもう立てまい?」
「この世界が魔砲少女を必要とし、やむを得ずリプル氏が選ばれた。強さの壁ってヤツを知ってるシュマさんは、けれど、傍観出来なかったんだ」
「アトロボス」
「力の差を知りながらそれでも、リプル氏に自分から関わって行った。それがあなたの決意ならなぜ今こんなところで私を止めようと躍起になってるの?」
「アトロボス!」
問いかけは絶えない。
シュマは焦れて攻撃の指示を出すが、それに答えるものはなかった。
アトロボスが拒否の意思を持ってシュマを見る。
戦闘不能に陥っている相手を更に攻撃するような真似は、『長老代理シェマ』のモンスターとしての矜持が許さない。
今の彼の演じているものが『魔砲少女の付添い人シュマ』だったとしても、だ。
「っ、・・・・・・」
アトロボスの落ち着いた目にシュマは冷静さを取り戻す。
それでも消えずに、行き場をなくして燻る怒りが、その口を開かせた。
「君は考えたことがあるか、特別な力を持つがゆえに彼らが背負うことになる責任の重さを」
スィンパの返事は聞くつもりも無い様子で続ける。
「もしあの時、リプル君が巨大シエルレの撃退に失敗していたら、ユタトラはどうなったと思う。シエルレが街に入る前に私たちに倒せたか?果たしてどれ程の被害が出ただろうな。・・・ユタトラに住まう人々の命を、或いはその生活を背負うことすら一人の人間の身には重過ぎる。それが今、世界規模の異変が起こっているじゃないか。何がどうなるか分からない。その中で世界の命運を、一人で背負う。それがどれ程の重圧か、考えたことがあるか」
一個人の立場でいたスィンパには見ることの出来ない、広く多くのもののことを考える長老代理の視点からシュマは問うた。
「二人いれば、もう一人の落ち度だと転嫁することで心は守られる。だがたった一人では、自分のしたことだけが全てだ」
「あの娘は、自分の心を守るために誰かを犠牲に出来るの?」
「・・・だが、二人で負えば重さは半分と、よくいうだろう」
「だったら三人で負ったって・・・」
良いじゃない、という前に、ようやく分かった。
その重すぎる責任を負わせたくなくて、シュマは自分を止めようとしているのだ。
ずんと頭が重くなるのを感じる。世界の命運を背負う?心を守るための犠牲?
でも、そんなことだったろうか、自分が一生懸命リプルの背中を追いかけた理由は。
何のために首を突っ込んだのか考えた時、そこには今まで見てきた後姿・・・なんだかんだで必死で、辛そうだったり、一杯一杯だったりするリプルの背中があった。
謎の美女に辿り着いてもいない自分にはそれが全てだ。
「私は知ってる。見掛けは魔砲少女でも、その中身は普通の女の子。街で噂の魔砲少女まじかる☆りぷるんが、ただのヴァシアタ出身のブリーダーのリプルなんだって知ってる」
遺跡で見た彼女の寝顔を思い浮かべて、少し笑う。肩の力を抜いた。
「最初は『謎の美女』目指して有名になってやろうと思ってたんだけど、初めて魔砲少女としてのリプル氏を見たとき彼女、ボロボロでさ、特別な力があったって全然余裕無いでやんの。それを見てたら、なんか放って置けなくて。彼女が何を背負っているのかも、何のために戦っているのかも知らないのにね。私に出来ることは余りに少ないけれど、あの娘が苦しい時にスッと手を差し伸べて、大丈夫ですかお嬢さん?って言ってやるくらいはしたかったんだ」
「何を馬鹿な・・・」
「長老代理の言い分があるなら、紳士の言い分もあるってわけよ」
さも良いことを言ったような顔で、スィンパはふふんと鼻を鳴らす。
納得いかない表情のシュマを引きずり降ろそう、彼の見ている長老代理の視点から、私の見ている個人の視点まで。
「知ってた?アルレム長老はシュマさんが遠征について来てたの知ってたらしいよ」
「なんっ・・・」
「シュマさんの考え方で答えてごらんよ。長老が出張るほど危険な遠征なのに、彼がシュマさんを追い返さなかった理由、分かる?」
「・・・・・・」
長老代理に相応しく合理的にものを考える彼には、分かるまい。
物言わぬシュマの答えを待たず、スィンパは自分に見える狭い視野から、言った。
「一人じゃないのが嬉しかったんじゃないのかな、アルレムさんは」
「そんな単純な・・・」
否定しかけるシュマに思い出されたのは、いつか見たアルレムの背中。
その背中はシディララマの全てを背負っても決して曲がらず、強く、大きく、・・・・・・。
声を失ったシュマに、スィンパは半ば独白のようにして続ける。
「自分にある力だけで運命を切り拓いていけてしまうその人たちを、私たちは『英雄』だの『魔砲少女』だの名前をつけて区別しようとしてしまうし、そこに並ぼうとして自分を誤魔化してみたりもするけどさ、やめちゃおう」
スィンパは、ポーチに仕舞い込んだ夏衣を改めて広げ、羽織る。
しばらく振りに袖を通した夏衣は、なんだか懐かしい感じがした。
「暴走少女は今日でおしまい。これからはただのスィンパが、ただの美女に会いたい一心で、ただのリプルを追いかけたり、たまに助けたりする。それだけのことなんだよ」
レッドグラスも外してしまってから、スィンパはシュマを正面から見据えた。
その目がまるで悪戯を思いついた子供のように活き活きとしている。
何をすれば良いのか全て分かったかのように、迷いが無かった。
「結局特別な力があるかどうかは関係ないの。私たちは、誰かが苦しむのを黙ってみてられないお人好し同士だったってだけの話でしょ?それが邪魔したりされたり・・・もう難しいこと考えるのは止めにした。私は行くよ、あの娘をお茶に誘いにね」
島の中心に向きを変えかけて止まり、シュマの前まで来て手を差し出す。
「一緒に行かない?ただのシェマさん。なんだって一人より二人、二人より三人の方が楽しいって相場が決まってら」
差し出された手を見つめて、長い逡巡の末、シュマがその手を振り払う。
背を向けて数歩離れ、言い捨てた。
「やはり、私は君のように単純には考えられそうにない」

「だがもし君が勝ったら、難しいことも考えずただ傍に居てみるのも悪くないのかもな」
「・・・シェマさんが勝ったなら、重すぎる責任を回避する賢さに従うのも、悪くないかもね」
それが互いに納得出来る譲歩案だと、確認しあう。
距離を取ってからシュマは振り返る。
蝶の仮面から見える双眸が、はたとこちらを見据えた。
そこにあるのは、これまでシュマを支えてきた意思だ。
どんなに納得できたとしても、そこに新たな意思が芽生えたとしても、こればかりはどうしようもなく折れがたい。そんなもの。・・・信念、だった。
きっとスィンパも今そんな目をしているのだろう。
分かり合えなかったのではなく、互いの根本にあるものが違いすぎるだけ。
自分が駄目になるまで抗ってみなければ納得できない、ただそれだけだ。
人が見たら無駄な話し合いだったと思うだろうか、けれどそんなことはない。
少なくともこの勝敗に伴う決定には、互いに納得できるのだから。
「橙、起きて」
その呼びかけに橙はムクリと身体を起こすと、やっと話は終わりましたかと言わんばかりに身体を伸ばす。
その橙の様子を見てスィンパは満足そうに頷き、シュマは驚いた様子も無くただ不敵に笑った。
少しでも技術の差を埋めようとスィンパは提案を出す。
「もう距離の図り合いも、カウンター狙いもナシだよ」
「文字通り、一発勝負ということで良いんだな。それで構わない」
ブリーダーとしての自由な立ち回りを封じることで、これは純粋なモンスター同士の力比べになる。
その状態に一利もないシュマが了解したということは、先ほどの試合で橙の力量を見切ったのだろう。
一撃で決める、たった一撃に全てを乗せて、互いにそれを受け止める。
勝負を少しでも有利に導こうと、スィンパは思考を巡らせた。
橙に放てる最高ダメージの技、アトロボスに有効な属性、距離帯・・・
けれど本当に大事なのはそこではない、今このときという状況だ。
イダルの力に満たされた、紫の霧に包まれているというこの状況。
足下にイダルが転がっていた船着場では、ひなたの放電を通常より早く撃ち出すことが出来た。
そしてこの場所では、助かるはずの無かった橙に傷の一つもない。
イダルが傍にあるとき、まるでスィンパの意思を汲んだかのように不自然なことが起きている。
ひとまずそれを《原因と結果》として考えるならば、イダルには意思の実現を手助けする性質があるということになる。
シュマにも劣らぬ《負けない意思》を持って臨めば、或いは。
「橙、全力で行くよ」
「アトロボス、実力の差を見せてやれ」
空気が変わって、対峙する二者の間にギリギリと引き絞られた糸が張られたような緊張感が満ちる。
一触即発。否、触れなくてもすぐに弾けてしまいそうな戦いの気配。
距離は中距離、近くもなく遠すぎもしない場所から、相手を見る。
最初に対峙した時と似た状況だが、今は相手の動いた瞬間が《その時》だと互いに思っているかのように、どちらも動かなかった。
紫の光の尾を引いて、イダルはまだこの島に集まっている。
そのうちの一つが島の中心まで届かずに失速し、島の端、張りつめたその場の中心へ
コトリ、と

「ムーンサンダー!!!」
「ファイアボール!!!」

眩しく爆ぜる紫電の光に、激しく燃え立つ炎の光。
刹那も違わず放たれた技が、正面切ってぶつかり合う。
その威力は拮抗し、互いに勢いを削ぎ合うばかり。

しかし互角では、ない。

年老いた橙にこの威力を持続させることは出来ないだろう。
だからスィンパは事態を展開させる手段を探し、シュマはその手を読まなければならなかった。
思考は一瞬。
《負けない意思》によってイダルから力を得られるのは、相手も同じだ。
ならば、それを折る。
同じ結論に至った二人のブリーダーが、同時に口を開いた。

「何も出来ないのを恐れているから長老に追いつけないんでしょ!!」
「いつまでその年老いたアニャムーに頼りきっているつもりだ!!」

鋭い言葉は何物にも遮られず、互いの心を強く叩く。
片方の放つ光に揺らぎが生まれ、もう一方の光がそれを糧に更に明るさを増す。
溢れる光が全てを照らす。

劣等感も、悔しさも、もどかしさも、重圧も、隔たりも、さみしさも、焦りも、
強さも、弱さも、

全部、奇麗に塗りつぶした。


一瞬、完全なる白に染まった世界は、徐々に元の色を取り戻していく。
「お答えしましょう」
裸足で地面を踏みしめて、宣言するものがあった。
「橙は今日が最後の遠征になります!」
疲れきって突っ伏した橙が、それでも顔だけ起こして愉快そうに「にゃはー」と鳴く。
ダウンしているアトロポスの傍で、すとんと地面についた膝は、『シェマ』のもの。
蝶の仮面が硬い音をたてて落ちる。
仮面を失った彼は、もう『シュマ』ではなかった。
「いつの間にか解決済みなんて、ずるいじゃないか・・・」
降参だ、と言いたげに笑うのを見て、スィンパはヒュウと息をついた。
「アニャムーはウィンドレジスターを覚えないことを、シェマさんが思い出さなくて良かったよ」
「な、何を」
「ヴァシアタディスクは指示できる技が少なくて、シェマさんの使ってたのがセルフシールドとファイアボールとウィンディバレットだけ。だから保険になるかと思って、橙には倒れている間にこっそりファイアレジスターを張って貰ってたの」
「そ、ま、なんっ」
スラスラと手の内を明かすスィンパに、シェマはもの言いたげに口を開くが、言いたいことがありすぎてなかなか出てこない。
「その指示具の中距離技にもう一つ空きがあったり、この勝負が遠距離合戦だったりしたら、詰んでたなー。酷い博打だった。けどイダルの力を利用する以上に、その力に頼り切っちゃったシェマさんも大概、酷い博打うちだったね」
「君も人のことは言えないだろう」
「お互い様だから言えることもあるでしょう、それともなに、イダルを利用する他に何か仕掛けたものがあったんだ?」
ぐむ、と声もなく口を閉じるシェマに、スィンパはビシッと人差し指を突き付けた。
「これだけは言える、イダルの力は現実を捻じ曲げる力。誰かの都合の良いように作り変える力、或いはどうにもならない現実をどうにかするための力。そんな魔法みたいな力に頼って良いのは、それが本当に必要な特別な人たちだけで、多分私たちみたいな脇役には使いこなせるもんじゃない。・・・それに」
スィンパはニヤリと笑った。
「私、言葉責めには自信がなくてね」


「もう一度勝負だ!納得できるわけがないだろう!」
「あー、はいはい、負け犬さんはしっかり土撒いて頂戴ねー」
紫の霧の中スィンパが先頭に立って、暴走したモンスターたちを退けながら、後に続くシェマとニェポとデーボの三人が瘴土を撒いて黒い道を作っていく。
滅石が出す瘴気の影響を受けた瘴土は その瘴気を以って生き物を退けるため、よく雑草が生えるのを防ぐために撒いたり害獣除けに使ったりする。どうやらそれは暴走したモンスターたちにも有効らしく、彼らはスィンパたちの作る黒い道を避けるようにうろついていた。
これが、今回スィンパの提案した『力ある者の助け方』
もっとも、魔砲少女の帰り道を作るだけじゃないかと言われればそれきりであるが、それでも少しは役に立つはずだ。
「しかし、それなりに積んでるだろうとは思ってたけど、意外と沢山積んでたんだね」
「そりゃおめぇ、いつか息子に贈るつもりであつらえた船だ、虫やネズミに齧られたかねーだろ?」
こんなに早くなるとは思わなかったがな、と言うデーボに、ニェポが身体をすくめる。
意外だったのは、デーボがニェポの航海を嫌っていた訳ではなかったことだ。
よく考えれば帆船一つで日が暮れるまで海にいたり、その罰の一週間の航海禁止令も破ったり、こちらが一方的にルールを破りまくっていたわけである。船を出すたびに叱られたのも当然だ。
「俺がルールを守らせ、かーちゃんが破らせる。昔からそうだったがヒューリまでかーちゃんみてえなことするたぁな、血は争えねえや。俺だって遊びたがるガキをそういつまでも家に囲っていられるもんじゃねぇってのは分かってた。だからあんだけ厳しくやったんだ、毎度神妙な気分で出航できたろ?」
「うぇぇぇ・・・」
心底疲れたような顔をしたニェポに、デーボがガハハと笑う。
モンスターを退け瘴土を撒きながら、緩やかな上り坂を登って行くと、遠くで声が聞こえた。
誰かを呼ぶ声だった気がする。
それが誰に対して呼びかけたものか、スィンパには分からない。
けれど、この霧にも遮られないそれはきっと、いろんな想いが込められた呼び声だったのだろう。
何が出来るわけでもないけれど、自然と足早になった。
最後に少し急な坂をよじ登るようにして越えれば、ようやくスィンパは島の中心部にたどり着く。
そこに期待した謎の美女の姿はなく、リプルとライガーが居るきりだった。
こちらに背を向けて空を見上げるその少女の顔も見えやしないのに、彼女が大きな区切りを迎えたのだと分かる。
ひょいと横から、ニェポが顔を出した。
「また出遅れた?」
「いーや、私の出番はこれからさ、しっかり見とけよニェポ」
不思議そうに首を傾げるニェポに笑って、後続の二人が追いつくのを待ってから、ようやくその背中に声をかけた。
「おぉい、そこのお嬢さん!一緒にユタトラ帰ってお茶しない?」
その声に、少女が振り返る。
それは素敵な笑顔だった。



銀色の石は再び拡散する。
それは、世界のどこかで思い出し笑いをしながら老爺が見ていたかも知れない星空を。
それは、船着き場で大事な人達の帰りを待っていた若い女の見ていた星空を。
それは、ある少女の傍にこれからも居続けようと決心した娘の見ていた星空を。
多くの人の願いが込められた星空を、綺麗な紫色の光が駆け抜ける―――



BGM 『子守唄』(ヴァシアタ民謡)
編曲:暴走少女スィンパ制作委員会
歌:スィンパ

%83%94%83%40%83V%83A%83%5e%82%cc%8eq%8e%e7%89S%82%aa%95%b7%82%b1%82%a6%82%e9%81B%0d%0a%96%7b%97%88%81A%82%bb%82%ea%82%cd%82%bd%82%be%8eq%8b%9f%82%f0%82%a0%82%e2%82%b5%90Q%82%a9%82%b9%82%e9%82%be%82%af%82%cc%89S%82%be%82%aa%81A%8c%c3%82%a2%95%97%8fK%82%cc%8ec%82%e9%92n%88%e6%82%c5%82%cd%8e%80%82%c9%8ds%82%ad%8d%b0%82%c6%82%cc%95%ca%82%ea%82%f0%90%c9%82%b5%82%f1%82%c5%89S%82%ed%82%ea%82%e9%82%b1%82%c6%82%aa%82%a0%82%c1%82%bd%81B%0d%0a%82%b1%82%b1%82%c9%82%cd%82%bd%82%ad%82%b3%82%f1%82%cc%90l%82%aa%8b%8f%82%e9%81B%0d%0a%82%e6%82%ad%82%d0%82%b4%82%cc%8f%e3%82%c5%95%f8%82%a2%82%c4%82%ad%82%ea%82%bd%90l%82%aa%81A%8d%a2%93%ef%82%c8%89%93%90%aa%82%c9%8b%a4%82%c9%93%7c%82%ea%82%bd%82%e8%82%b5%82%bd%90l%82%aa%81A%82%b5%82%e5%82%c1%82%bf%82%e3%82%a4%8e%e5%90l%82%c6%96%e9%96%be%82%af%82%dc%82%c5%91%9b%82%ac%8d%87%82%c1%82%c4%82%a2%82%bd%90l%82%aa%81A%8a%ef%96%ad%82%c8%97x%82%e8%82%f0%97x%82%c1%82%c4%82%ce%82%a9%82%e8%82%cc%90l%82%aa%81A%89%bd%93x%82%e0%8e%8e%8d%87%82%f0%92%a7%82%f1%82%be%82%af%82%ea%82%c7%8c%8b%8b%c7%88%ea%93x%82%e0%8f%9f%82%c4%82%c8%82%a9%82%c1%82%bd%90l%82%aa%81A%96O%82%ab%82%e9%82%d9%82%c7%88%ea%8f%8f%82%c9%94p%93s%82%f0%8f%84%82%c1%82%bd%90l%82%aa%81A%8b%a4%82%c9%8a%f4%82%c2%82%e0%82%cc%8e%80%90%fc%82%f0%90%f6%82%c1%82%bd%90l%82%aa%81A%8e%a9%94%9a%8d%87%90%ed%82%c9%96%be%82%af%95%e9%82%ea%82%bd%90l%82%aa%81A%8e%e5%90l%82%c9%8cC%82%f0%95%fa%82%c1%82%c4%82%e6%82%b1%82%b5%82%bd%90l%82%aa%81A%82%a2%82%c2%82%e0%95s%93G%82%c9%8f%ce%82%a4%90l%82%aa%81A%0d%0a%82%bb%82%b5%82%c4%92N%82%e6%82%e8%82%e0%96T%82%c9%8b%8f%91%b1%82%af%82%bd%90l%82%aa%81A%97%b7%97%a7%82%c6%82%a4%82%c6%82%b7%82%e9%8e%a9%95%aa%82%cc%82%bd%82%df%82%c9%8eq%8e%e7%89S%82%f0%89S%82%a4%81B%0d%0a%82%a2%82%c2%82%e0%8b%a4%82%c9%82%a0%82%e8%81A%82%c6%82%a4%82%cc%90%cc%82%c9%95%b7%82%ab%96O%82%ab%82%bd%82%cd%82%b8%82%c8%82%cc%82%c9%81A%96%bc%8ec%82%cc%90s%82%ab%82%c8%82%a2%82%bb%82%cc%90%ba%82%c9%91%97%82%e7%82%ea%82%c4%97%b7%97%a7%82%c2%81B%0d%0a%0d%0a%8aC%82%f0%89z%82%a6%81A%95%97%82%f0%92%c7%82%a2%89z%82%b5%81A%89_%82%f0%93%cb%82%ab%94%b2%82%af%82%c4%81A%8b%f3%82%d6%81A%93r%95%fb%82%e0%82%c8%82%ad%8d%82%82%ad%82%d6%81B%0d%0a%0d%0a%82%c7%82%b1%82%dc%82%c5%82%e0%8f%b8%82%c1%82%bd%89%ca%82%c4%82%c9%81A%91%e5%82%a2%82%c8%82%e9%93%f1%82%c2%82%cc%88%d3%8ev%82%aa%82%a0%82%c1%82%bd%81B%0d%0a%83s%83V%83b%83s%83V%83b%82%c6%83%80%83%60%82%f0%90U%82%e9%82%a2%81A%82%a2%82%c0%82%df%82%e9%88%d3%8ev%82%c9%81A%0d%0a%9c%92%8d%9b%82%c6%82%b5%82%bd%97l%8eq%82%c5%82%bb%82%ea%82%f0%8e%f3%82%af%8e%7e%82%df%81A%82%a2%82%c0%82%df%82%e7%82%ea%82%e9%88%d3%8ev%81B%0d%0a%a5%a5%a5%a5%a5%a5%81B%0d%0a%97y%81X%82%e2%82%c1%82%c4%82%ab%82%bd%8d%b0%82%aa%96%d9%82%c1%82%c4%8c%b3%97%88%82%bd%8f%ea%8f%8a%82%d6%88%f8%82%ab%95%d4%82%bb%82%a4%82%c6%82%b7%82%e9%82%cc%82%c9%8bC%95t%82%ad%82%c6%81A%83%80%83%60%82%f0%90U%82%e9%82%a4%8e%e8%82%f0%8e%7e%82%df%82%c4%81A%93%f1%82%c2%82%cc%88%d3%8ev%82%cd%82%bb%82%cc%91%e5%82%ab%82%c8%8e%e8%82%f0%8d%b7%82%b5%90L%82%d7%82%bd%81B%0d%0a%8f%ad%81X%8c%99%82%bb%82%a4%82%c9%82%b5%82%c8%82%aa%82%e7%82%e0%81A%8d%b7%82%b5%90L%82%d7%82%e7%82%ea%82%bd%8e%e8%82%cc%95%bd%82%c9%8d%7e%82%e8%82%c4%81A%8f%ac%82%b3%82%c8%8d%b0%82%cd%90k%82%a6%82%e9%81B%0d%0a%0d%0a%90%ba%82%c8%82%ab%90%ba%82%c9%96%e2%82%ed%82%ea%82%ea%82%ce%81A%0d%0a%8d%b0%82%cd%90k%82%a6%82%e9%82%b1%82%c6%82%c5%82%bb%82%ea%82%c9%93%9a%82%a6%82%bd%81B%0d%0a%0d%0a%93%f1%82%c2%82%cc%88%d3%8ev%82%cd%8a%e7%82%f0%8c%a9%8d%87%82%ed%82%b9%82%c4%94%f7%8f%ce%82%f1%82%be%81B%0d%0a%20

・・・、・・・・・・。



BGM 『船はとても遠くへ』(船着場)

「つまり、そういうわけで、いぢめる神様といぢめられる神様は、神殺しの病ケン=ショーエンにならない程度にいぢめいぢめられるため、休憩として死んだモンスターの魂を次の円盤石に込める時間を作ったのでした、めでたしめでたし」
「うっそだぁ」
「昔話に嘘も本当もあるもんか。でも、ウチの村じゃみーんな この話を小さい頃から聞いて育つんだけど、ウルばあちゃんも知らないっていうし、相当ローカルなネタだったんだねぇ」
「ローカルでよかった、そんなお話聞かされて育ちたくないよ、おいら」
嫌そうに顔をしかめるニェポに、「そんなことより」とスィンパは目配せする。
視線の先には、出航受付を済ませて海側の出入り口を出て行くリプルの姿があった。
一人ではない。その頭の上にピクシーが座り、隣にはいつぞやのちびっ子、それにシュマも一緒だ。
この前剥ぎ取ってやった蝶の仮面をまた装備している辺り、シュマはこれからもあの格好を通していくのだろう。
もっとも、『暴走少女は今日でおしまい』と大口を叩いておきながら、今また夏衣を脱ぎ捨ててオレンジポーチにレッドグラスを忍ばせている自分もやはり人のことは言えない。
「まだ追いかけるの?ホント飽きないね・・・」
「飽きないよそりゃ、だって好みのタイp ごめん冗談痛いひなたさん痛い」
橙からひなたへ、いつの間に煩悩ストッパーが継承されていたのか、ゴッゴッと角で叩かれる。
結局あの後どうなったかといえば、なんてことはない。まっすぐユタトラに戻ってきて、そのまま自己紹介もしないで別れただけなのだ。
彼女を取り巻くものの中でもほんの脇役程度にしか、スィンパは記憶されていないだろう。
今はまだ脇役だが、いつか前線に出て活躍し、登場するたびに魔砲少女から「レッドグラスの紳士様・・・!」と呼ばれる日が、来るはずだ。
謎の美女に出会うまでにはそれくらいの活躍をしていたい。
ヒューリが分厚い出航受付の帳簿を見て、当たり前のようにリプルの行き先を読み上げた。
「今日の行き先は瘴気を纏う海域にある島だ。並の船では近寄れないだろうな」
「ってなんで姉ちゃん教えちゃってんの!?」
「なんでって、いつも通り行くんだろ?」
「おいら、スィンパ専属の船乗りになった覚えはないよ?」
それでもしぶしぶといった様子で受付カウンターから出てくるニェポに、スィンパは声をかける。
「お話ってものはね、あるところまで行くと話すのを止めるだけで、本当に終わるって事はないんだよ」
「何の話?」
「昔話の締めくくりの言葉。神様のお話の終わりに言うのを忘れたからさ」
そして話すのを止めて、スィンパはモモテロのひなたを伴い受付所を後にする。


眼前には、限りなく広がる海。
スィンパはふと立ち止まり、そして遠く遥かな、でもいつも綺麗な空を仰ぐ。


決して誰とは言わないけれど。
馬鹿に付き合ってくれる人たちが居てくれるおかげで、私は今日も笑顔です。






おしまい

--- ア ト ガ キ ---




昨年の7月17日に第零話のメモ帳を立ち上げて、只今7月29日にひとまず完成したつもりになっています。パッと見、2週間ほどしか経っていないように見える日付マジックですね。
書きたいことが多すぎたのでいろんなものを次の記事に任せることにします。
とりあえず隙だらけな展開に全私が涙した。
それでも少々マシっぽいのは、我らが原作チェック担当のアストンさんのお陰でございます。
某所の誤字の発見、読みにくさの指摘、などなど、実に見事でした。
アストンさんのお力無くして完成はあり得ませんでした。
助言を100%生かせなかった部分もありますが、その助言に当作品は大分良い影響を受けています。
まずはアストンさんに、ありがとうございました。

この作品は、熱しやすく冷めやすい私が唯一 一年以上の時間をかけて完成させたものとなりました。
小説という表現の仕方があるという発想を見せてくれたやみなべ氏に、二次創作もアリだと教えてくれた瑞希氏に、まだまだ遅くないんだと気付かせてくれた鴉人氏に、そしてまた とっとと書いて上げろよホラホラと急かして下さったやみなべ氏に、心より感謝しています。
どれが欠けてもこの作品が書き始められ、公開に辿り着くことは出来なかったでしょう。
しかし公開したら完結させなくてはならないという義務感だけでは、やはり描き終えることは出来ませんでした。
コメント出来ないよう設定した白紙に対して それでもブログ内でリアクションを下さった方々、某所で感想を下さった方々、闇鍋wikiでのトップ絵、製品情報、スペシャルページでの作品の数々、そして魔砲少女まじかる☆りぷるんRと、どこかのタイトルがあったりなかったりする作品のお陰で、今アトガキを書くことが出来ております。
一年かけただけあって、やたら感謝一杯な気持ちです。
アトガキが長すぎるとかもう知りません。ありがとう、すみませんでした、本当にありがとう。

そういえば、反転文字に飽き足らず、あの暗号はなんだ著者出て来い!なんて罵倒が聞こえますが、我々の業界ではご褒美です。
書かない方が良いかなぁと最後の最後まで悩んだ結果こうなりました、エンディングテーマが子守唄なんて早まったことしたなぁ。
けれど、そういう出来事まで含めて、育成ですもんね。
で、どう読めば良いのかって?
白紙の読み方のヒントを書いてた場所にでも、書いてあるんではないでしょうか。
読めないようにしてあるということは、それはもう読まないで欲しいわけですが。
ああでもこの白紙は少しは読んで欲しかったわけで、読めないようにしてあってもやっぱり読んで欲しいということなのか。
ともあれ、鬱陶しい隠し文章に付き合わせてしまい申し訳ありません。

ひとまずの目標を終えて、中途半端にしてきたいろんなものを片付けていきたいと思います。
いやその前に見ないで置いたものの鑑賞・・・いやいやだから試験が先か。

この白紙記事を見てくださっているあなたに、
最後の最後までお付き合いくださり、本当にありがとうごじあました!














白紙はここで終わっている。
トラックバック(0) 
共通テーマ:モンスターファームラグーン

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。